2012年11月12日月曜日

托鉢調査第1弾

第二回 (11月12日放送) 「托鉢」調査

『Project Scoon』最初の調査対象は「托鉢」だ。
我々は普段、駅前などで托鉢僧を見かける機会はあるとしても、あまりその存在を気にすることはない。
しかし、こうした托鉢について考えてみると、その実態は謎に包まれている部分が多い。
そこで今回は二班に分かれて都内某所に張り込み、知られざる「托鉢僧」の一日を追った。

調査目的は大きく分けて、以下の二つである。
1. 托鉢僧はどのように一日を過ごしているのか
2. 托鉢僧にお布施(喜捨)をする人はどの程度いるのか

 まずは「托鉢」とは何かについて確認しておく必要があるだろう。
托鉢とは、乞食行や行乞とも呼ばれ、古来インド宗教における出家者の修行形態の一つであり、日本においては、6世紀頃仏教の伝来とともに中国・朝鮮半島から伝わった。
 このように長い歴史を持つ托鉢だが、1872年11月9日には托鉢の禁令が出されている。
こうした禁令の背景には、明治新政府の意向が反映されていたと言われ、托鉢修行であっても物乞いをして歩く事は、近代国家として禁止すべき行為と見なされたようだ。
 その後、1881年8月15日には制限付きの解禁が行われ、托鉢免許証の携帯が義務付けられることになった。この規定は1947年の日本国憲法施行によって信教の自由と政教分離が定められるまで継続した。現在でも宗派ごとに托鉢許可証や、僧籍番号と届出の一覧が存在し、問い合わせによって確認することが出来るらしい。

 また、托鉢には三種類の形態が存在し、家々を巡る軒鉢と、一軒ずつ立ち止まることなく道を歩く連鉢、そして寺院の前や公道などで直立して喜捨を乞う辻立ちに分かれる。
 そして、今回はこの中でも辻立ちと呼ばれる托鉢を対象とした調査を行った。それでは、各班が丸一日掛けて調査した内容を見ていくとしよう。






≪都内某所A駅での托鉢調査≫
事前調査によれば、この駅には不定期ではあるが、朝9時頃から托鉢僧が現れることが確認されており、我々はこうした情報を元に張り込みを開始した。

厳しい残暑が続き、この日も朝から30度を超えようかという天気だった。
9時31分、網代笠を目深にかぶった托鉢僧が我々の前に現れた。
長身で面長、托鉢装束を纏い、白鼻緒の雪駄を履いた姿は40代ぐらいに見えた。

10時5分、駅前の百貨店に入り、地下1階の食品売り場へ移動を開始。
駅西口改札前の定位置についてから30分ほど経過、慣れた足取りで地下街へと移動する。
特に何かを手に取る様子もなく、野菜・総菜売り場のレジへと向かっていった。
そこで店員と一言二言会話した後、暑さを凌ぐためか、氷袋らしき物を受け取っている。

10時25分、中年の男女(50-60代)が最初のお布施をする。
それぞれ100円程度だろうか。あまり金額は多くないようだ。

10時57分、中年男性(60-70代)と会話。
一体どのような会話をしているのか、気になるところではあったが、残念ながら聞きとることはできなかった。2、3分ほど話した後、中年男性は足早に去って行った。

11時19分、中年男性(50-60代)がお布施をする。
11時23分、中年女性(50-60代)がお布施をする。

11時27分、西口改札前の定位置から駅の東口方面へ移動を開始。
11時32分、菓子専門店でヤマザキナビスコの「RITZ(リッツ)」を購入。
しかし、この後、托鉢僧は駅の雑踏の中に紛れ込んでしまい見失ってしまう。
おそらく食事休憩を取ったと思われるが、場所を特定することはできなかった。

13時38分、托鉢僧が地下の百貨店からエスカレーターで最初の位置へ戻る。
目標を見失ってから約二時間が経過した後、ようやく定位置に戻るのを確認。

13時53分、中年女性(60-70代)がお布施をする。
合掌した後に深々と礼をして去って行ったことが印象深い。

14時21分、定位置から移動し、駅の北口方面へと向かう。
駅前ビルの中で5分ほど待機した後、網代笠を取って汗を拭いつつ、近くの某銀行へ。
ATMを利用しているのは確認できたが、詳細は分からず。

14時53分、再度、駅前の百貨店に入り、地下1階の食品売り場へ移動を開始。
ここでも店員と会話した後、氷袋らしき物を受け取っている。
その後、西口改札前の定位置へと戻るのを確認。

15時35分、駅前の百貨店へ向かった後、旅行中の外国人に話しかけられる。
会話内容から察するに英語で何かを説明しているようだった。
5分ほど話した後、西口改札前の定位置へと戻るのを確認。

15時57分、会社員らしき男性(50-60代)がお布施をする。
16時4分、眼鏡をかけた男性(40-50代)がお布施をする。
今までお布施をした中では最も若かったのが、この眼鏡をかけた男性だった。

16時41分、托鉢僧は駅構内を移動し、東口ターミナル方面へ向かう。
17時13分、托鉢僧が踏切を渡った所を確認したものの、遮断機が下りたため、その地点へ移動する際に見失ってしまう。
現場の状況を考えると路地に入ってしまったか、バスを利用した可能性が高い。

18時15分、西口改札前や駅周辺で張り込みを続けたものの、これ以上の調査は難しいと判断。懸命の捜索も空しく、調査はここで打ち切られた。



≪托鉢調査結果≫
 調査は9時20分-18時15分まで約9時間に及んだが、我々が調査を行った某駅では、利用者が非常に多く、人の波が途切れることはなかった。しかし、駅利用者の殆どは托鉢僧に目を向けることもなく、ただ通り過ぎるだけであった。
 結果的に、お布施をしたのはわずか7人(内訳:男性4人/女性3人)であり、合計しても少額だった。また、托鉢僧が喜捨を乞うた実働時間は4時間30分ほどであり、それ以外の時間には6回ほど移動を繰り返している。

 最終的に見失ってしまったことは残念だったが、今回の調査では、これまで知ることのできなかった托鉢僧の実態について把握することができたと言えるだろう。

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