2012年12月3日月曜日

古本屋は今

 今年も残すところあと一か月、短い紅葉とともに読書の秋が過ぎ去り、本格的な冬を迎えようとしている。そうした中、近年の出版業界を見渡すと、こちらも少しばかり秋を通り越し、冬の時代を迎えつつあるようだ。
 …余談だが、読書の秋の由来は、韓愈(768-824)が遺した詩の一節、「燈火親しむべし」に基づいており、秋は涼しく夜も長くなることから、燈火の下で読書をするのに最も適した季節になるという意味が込められている。
 さて、冬の時代とは言うものの、出版業界の不況が取り沙汰されるようになったのは、1990年代後半と言われており、それ自体は今に始まった話ではない。
 しかし、このような状況下にあって、近年ではブックオフなどの新古書店の存在に加え、アマゾンを筆頭とするインターネット書店の台頭によって新刊書店も減少を続けており、生き残りを賭けた熾烈な競争が起きている。
 さらには「Kindle」などの電子書籍も次第にシェアを拡大しており、出版業界はまさに劇的な変化を迎えていると言えるだろう。
 今回は出版業界の変化の中で、厳しい状況に立たされている古本屋について、その実態を把握するとともに、紙媒体としての書籍が電子書籍の普及によって、どのような影響を受けることになるのか考察していきたい。

 1. 古物商としての古本屋
 まずは古本屋を始めるためにどのような手続きが必要なのか簡単に述べておきたい。 古本屋(古書店)の開業には、古物営業法に基づいて都道府県公安委員会の許可が必要だ。これは、盗品の売買を捜査することを目的としており、リサイクルショップや質屋などと同様の措置が取られている。
 そして、古物商は基本的に一万円以上の売買内容を古物台帳に記載することが義務付けられており、これを3年間保管する義務が存在する。
 元々、古本屋は事務処理の難しさなどを理由として、買い取り目録の正確な記録を免除されていたようだが、平成23年4月1日以降は、万引き被害品などの市場流入増加を理由として、書籍についても本人確認義務・記録義務が義務化された。 こうした古物商になるための手続きは時間がかかるものの、書類の記入自体はそれほど難しくないようで、新規参入の門戸は多少なりとも開かれているように感じられた。

 2. 古本屋調査概要
 先述したように、アマゾンやブックオフなどの企業が台頭することによって、利便性や販売価格などの面で差が広がり、個人経営の古本屋は顧客を奪われることが予想される。 それでは、このような古本屋はどのように生計を立てているのか。我々は、都内某所の古本屋を実際に訪れ、調査を行うことでその現状を明らかにしようと試みた。
 ※調査結果の詳細についてはUSTREAM中継にて報告を行う予定です

 3. 電子書籍の普及と紙媒体としての書籍の行方
 ――「本は物質的実体を持たないものになりつつある」  今年6月、アメリカでは既にeBookの売上がハードカバー書籍を上回り、電子書籍市場はさらに拡大の兆しを見せている。
  一方、日本では11月にヤマダ電機やヨドバシカメラ、エディオンの家電量販店三社が、アマゾンの電子書籍端末「Kindle」を取り扱わない方針を発表した。この対応には「Kindle」が自社の通販サイトへ誘導することによって、顧客流出が懸念されるという判断があり、家電業界にとっても他人事ではない事情が存在している。
 日本デビューを飾った「Kindle」は、ネット販売とは言え、初日の出荷分が売り切れになるなど、大きな反響を呼んでいることは事実である。
 その一方で、ここ最近「日本は電子書籍の墓場」という指摘もなされている。果たして、日本に真の電子書籍元年は訪れるのか。それとも、ガラパゴス化という名の規制によって、電子書籍の普及は足止めされてしまうのだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿